前回、「マゴグのゴグ」は、預言者たちが何度も語ってきた人物であるという視点から、エゼキエル38章をエレミヤ50~51章、イザヤ13章と比較し、それらの預言が同じ出来事を指している可能性について検証しました。そして、終末の堕落したエルサレム(大バビロン)を攻撃させるために、主が北の大国(マゴグ)とその連合国の軍隊を召集すると結論しました。不品行と不信仰、偶像礼拝と魔術に侵されたエルサレムを罰するための道具として、神がゴグの軍隊を使われるのです。
今回は旧約の預言書と黙示録を比較して、「ゴグ・マゴグの戦い」と黙示録の「ハルマゲドンの戦い」の共通点と結末を調べ、また、戦いに対する神の目的を理解することで、これらは同じ終末の戦いであることを明らかにします。
1.大地震が起こる
① エゼキエル、イザヤ、エレミヤの地震預言
エゼキエルは、ゴグがイスラエルを攻める日に大地震が起こると預言しました。
エゼキエル38:18~22
ゴグがイスラエルの地を攻めるその日、──神である主の御告げ──わたしは怒りを燃え上がらせる。わたしは、ねたみと激しい怒りの火を吹きつけて言う。その日には必ずイスラエルの地に大きな地震が起こる。海の魚も、空の鳥も、野の獣も、地面をはうすべてのものも、地上のすべての人間も、わたしの前で震え上がり、山々はくつがえり、がけは落ち、すべての城壁は地に倒れる。
イスラエルがゴグと諸国の軍隊に攻撃される日、主はねたみと激しい怒りの火を吹き付け、イスラエルの地に大きな地震を起こされます。地上の全ての人間が震えあがるのですから、大地震が神の怒りによることを、全世界が知るのでしょう。
前回の記事ではエレミヤ50~51章とイザヤ13章から、終わりの日に北からエルサレムを攻撃する軍隊がゴグの軍隊である可能性について論じました。この2人の預言者も大地震を預言しています。
イザヤ13:13
わたしは天を震わせる。万軍の主の憤りによって、その燃える怒りの日に、大地はその基から揺れ動く。イザヤ24:10、12、19~21
都はこわされて荒地のようになり、すべての家は閉ざされて、入れない。・・・町はただ荒れ果てたままに残され、城門は打ち砕かれて荒れ果てる。・・・地は裂けに裂け、地はゆるぎにゆるぎ、地はよろめきによろめく。地は酔いどれのように、ふらふら、ふらつき、仮小屋のように揺り動かされる。そのそむきの罪が地の上に重くのしかかり、地は倒れて、再び起き上がれない。その日、主は天では天の大軍を、地では地上の王たちを罰せられる。
イザヤは、燃える怒りの日、つまり、主が天では天の大軍を、地では地上の王たちを罰せられる日に大地震が起こり、都と町が破壊されると預言しています。それは主の日のことです。エルサレムとイスラエルは大地震によって荒れ果て、人が住むことができなくなるようです。
エレミヤ51:29
地は震え、もだえる。主はご計画をバビロンに成し遂げ、バビロンの国を住む者もない荒れ果てた地とされる。
エレミヤはバビロンに地震が起こる事を預言しています。
旧約時代、偶像礼拝を悔い改めなかった南ユダ王国は、神の懲らしめとして偶像礼拝の発祥地であるバビロンの地に捕囚されました。神の憤りの期間が過ぎ、ユダヤ人は約束の地に帰りましたが、悪魔はその後も、聖書の民を真の神から引き離し、堕落させ、神の人類救済計画を破壊するために活動を続けてきました。
そして世の終わりには、神の都であるべきエルサレムが悪魔の支配下に屈し、この世の政治・経済・宗教体系に取り込まれ、大淫婦バビロンとされてしまいます(参照:「バビロンの起源と終末の大バビロン」「大バビロンの滅びとエルサレム」)。このバビロンが地震で荒れ果てるのです。
② 黙示録:エルサレムと諸国の町々に大地震が起こる
黙示録16章にも、大地震が起こって大バビロンが破壊されることが記されています。
黙示録16:17~20
第七の御使いが鉢を空中にぶちまけた。すると、大きな声が御座を出て、聖所の中から出て来て、「事は成就した」と言った。すると、いなずまと声と雷鳴があり、大きな地震があった。この地震は人間が地上に住んで以来、かつてなかったほどのもので、それほどに大きな、強い地震であった。また、あの大きな都は三つに裂かれ、諸国の民の町々は倒れた。そして、大バビロンは、神の前に覚えられて、神の激しい怒りのぶどう酒の杯を与えられた。島はすべて逃げ去り、山々は見えなくなった。
第七の鉢がぶちまけられると、大バビロンに神の激しい怒りのぶどう酒の杯が与えられ、エルサレム(大きな都・大バビロン)と周辺諸国に大地震が起こります。
では、第六の鉢がぶちまけられた時には、何が起こったでしょうか?
黙示録16:12~16
第六の御使いが鉢を大ユーフラテス川にぶちまけた。すると、水は、日の出るほうから来る王たちに道を備えるために、かれてしまった。また、私は竜の口と、獣の口と、にせ預言者の口とから、かえるのような汚れた霊どもが三つ出て来るのを見た。彼らはしるしを行う悪霊どもの霊である。彼らは全世界の王たちのところに出て行く。万物の支配者である神の大いなる日の戦いに備えて、彼らを集めるためである。──見よ。わたしは盗人のように来る。目をさまして、身に着物を着け、裸で歩く恥を人に見られないようにする者は幸いである──こうして彼らは、ヘブル語でハルマゲドンと呼ばれる所に王たちを集めた。
日の出るほう(東)から来る王たちは、イスラエルに到達するためにユーフラテス川を越えなければなりません。第六の鉢がぶちまけられて川の水がかれ、王たちのために道が備えられました。
獣はエルサレムに王座を設ける「不法の人(Ⅱテサロニケ2:3~4)」で、一般的には「反キリスト」という名称で知られています。彼はダニエルが幻で見せられた「荒らす者(8:13)」であり、イエス様が「荒らす憎むべき者が聖なる所に立つ(マタイ24:15)」と警告された人物であると考えられます。
竜と獣と偽預言者たちの口から出た汚れた霊たちは、最後まで神に反逆する悪魔とその手下です。彼らは無謀にも、再臨されるイエス様と戦おうとして、神の大いなる日の戦いに備えるため、同じく最後まで神に反抗を続ける全世界の王たちをハルマゲドンに集めます。
ハルマゲドン(メギドの丘)はイズレエル平原に隣接する高台で、古代の町々の遺跡でできた丘です。敵に攻め取られた町が破壊され、その上に新しい町が建てられます。今度はその町が攻め取られて破壊され、その上にまた新しい町が建てられます。さらにその町が破壊され、また建てられ・・・メギドの丘は、そのようして何層にも町の廃墟が積み重なってできた高台です。この場所に王たちが集結し、メギドは反キリスト軍の本陣となるのでしょう。
そして、悪魔・悪霊に動かされた王たちの軍勢が、神と戦うために出陣します。すると第七の鉢がぶちまけられ、エルサレムと周辺諸国に大地震が起こり、エルサレムと、獣に従った諸国の民の町々が破壊されるのです。
ゴグがイスラエルに攻め込む日にも、獣と諸国の王たちが神と戦うためにメギドに集結する日にも、イスラエルの地に大地震が起こります。イザヤとエレミヤも、主の日の大地震を預言しています。
2.剣、疫病、雹、焼き尽くす火
ゴグの軍隊はどのように滅ぼされるのでしょうか?
① エゼキエルと旧約の預言者たちの預言:主の激しい怒りの火
エゼキエル38:21~22
わたしは剣を呼び寄せて、わたしのすべての山々でゴグを攻めさせる。──神である主の御告げ──彼らは剣で同士打ちをするようになる。わたしは疫病と流血で彼に罰を下し、彼と、彼の部隊と、彼の率いる多くの国々の民の上に、豪雨や雹や火や硫黄を降り注がせる。
神様がゴグをイスラエルの山々に連れて来ます。イスラエルにはヘルモン山(標高2800m)を除いて高い山はありませんが、海抜500mから1200mの山脈がいくつか伸びていて、イスラエルの北部地方ではゴラン高原、ガリラヤ丘陵、サマリヤ丘陵に町々が建てられています。
北から侵入したゴグの軍隊は、エルサレムに向かってそのような山々を南下し、町々を破壊しながら、エルサレムに向かって進むのでしょう。地をおおう雲のように広がったゴグの軍隊に主からの疫病が起こり、天からは豪雨や雹や火や硫黄が降り注ぎます。そして彼らは同士討ちをするのです。
エゼキエル39:2~3、6
わたしはあなたを引き回し、あなたを押しやり、北の果てから上らせ、イスラエルの山々に連れて来る。あなたの左手から弓をたたき落とし、右手から矢を落とす。・・・わたしはマゴグと、島々に安住している者たちとに火を放つ。彼らは、わたしが主であることを知ろう。
主が「ゴグの左手から弓を叩き落し、右手から矢を落とす」とあります。現代の戦争では、EMP兵器(電磁波爆弾)で電子機器の基盤が破壊されると、全ての武器は使用できなくなります。そのことを表しているのかもしれません。エルサレムを攻撃するための武器は全て役に立たなくなるのです(イザヤ54:17)。
そして火はイスラエルの山々だけでなく、マゴグ(ゴグの地)と島々の上にも放たれます。黒海とカスピ海の周辺、コーカサス地方、ユーフラテス川の周辺地域、地中海の島々にも火と硫黄が降り注ぐのでしょう。ですから、エルサレムとイスラエルのかなりの地域と、中東からロシア南部まで広大な地域が火に焼かれます。ソドムとゴモラの滅びどころではありません。
イザヤ30:27~30
見よ。主の御名が遠くから来る。その怒りは燃え、その燃え上がることはものすごく、くちびるは憤りで満ち、舌は焼き尽くす火のようだ。その息は、ほとばしって、首に達するあふれる流れのようだ。破滅のふるいで国々をふるい、迷い出させる手綱を、国々の民のあごにかける。・・・主は威厳のある御声を聞かせ、激しい怒りと、焼き尽くす火の炎と、大雨と、あらしと、雹の石をもって、御腕の下るのを示される。
イザヤも、主の激しい怒り、焼き尽くす火、大雨、あらし、雹が下ることを預言しました。これは主の大いなる虐殺の日(イザヤ30:25)の描写です。
主は、エルサレムとイスラエル民族にどのような態度を取るかによって、国々の民をふるいにかけます。そして、エルサレムとイスラエルを憎み、神に反逆する者たちのあごに手綱をかけて迷い出させます。神はゴグのあごに鉤をかけ、全軍勢を出陣させます(エゼキエル38:4)。すると彼らは、エルサレムを攻撃しようとしてイスラエルに進軍して来るでしょう。その時、イエス様が現れ、神に最後まで逆らう悪しき者たちを怒りの炎で滅ぼされるのです。
ゼカリヤ14:12~13
主は、エルサレムを攻めに来るすべての国々の民にこの災害を加えられる。彼らの肉をまだ足で立っているうちに腐らせる。彼らの目はまぶたの中で腐り、彼らの舌は口の中で腐る。その日、主は、彼らの間に大恐慌を起こさせる。彼らは互いに手でつかみ合い、互いになぐりかかる。
この描写から、終末の戦いで核兵器が使われるのではないかと推測する方がいます。主の燃える怒りはそれほど激しく恐ろしいものです。天から、焼き尽くす火や大雨や、あらしや雹の石が降り注ぎ、肉や目や舌が焼け溶けるので、寄せ集めの軍隊は恐怖で大恐慌を起こし、相手かまわず攻撃し合うようになるのでしょう。手でつかみ合い、互いになぐりかかるのは、精密機器が狂って武器が使えなくなるからかもしれません。これがエゼキエルの記した同士討ちであると思われます。
主の激しい怒りの火を受けると、全てのものがろうのように溶けてしまいます。
ミカ1:2~4
すべての国々の民よ。聞け。地と、それに満ちるものよ。耳を傾けよ。神である主は、あなたがたのうちで証人となり、主はその聖なる宮から来て証人となる。見よ。主は御住まいを出、降りて来て、地の高い所を踏まれる。山々は主の足もとに溶け去り、谷々は裂ける。ちょうど、火の前の、ろうのように。坂に注がれた水のように。
神ご自身であるイエス様が天の御座から立ち上がり、怒りに燃えて地上に来られます。
マラキ4:1
見よ。その日が来る。かまどのように燃えながら。その日、すべて高ぶる者、すべて悪を行う者は、わらとなる。来ようとしているその日は、彼らを焼き尽くし、根も枝も残さない。──万軍の主は仰せられる──ゼパニヤ3:8
それゆえ、わたしを待て。──主の御告げ──わたしが証人として立つ日を待て。わたしは諸国の民を集め、もろもろの王国をかき集めてさばき、わたしの憤りと燃える怒りをことごとく彼らに注ぐ。まことに、全地はわたしのねたみの火によって、焼き尽くされる。
「誰が主の民を虐げ、滅ぼそうとしたのか。誰が主の相続地エルサレムを分割し、奪い取ろうとしたのか。誰が王の帰還に反対し、立ち向かって来たのか。」
主ご自身がその証人となられ、歯向かう者たちを激しい怒りの火で焼き尽くされます。
② 黙示録:エルサレムと諸国に下る災害
黙示録では、エルサレムは、一日のうちにさまざまの災害、死病、悲しみ、飢えに襲われ、火で焼き尽くされます(18:8)。大きな都バビロンの裁きは一瞬にしてなされ(18:10)、その焼かれる煙は、世々限りなく立ち上ります(19:3)。また、大きな雹による非常に激しい災害がおこります(16:21)。
エルサレムを火で焼いたのは神ご自身ではなく、七つの頭と十本の角を持つ獣です。この獣は大淫婦(エルサレム)を憎み、荒廃させ、火で焼き尽くします(17:16)。それは神が、御心を行う思いを獣と十人の王たちに起こさせたからです(17:17)。
神は「獣=荒らす憎むべき者」を用いて、大淫婦と化したエルサレムを裁かれるのです。エルサレムを荒廃させ、焼き尽くした獣とその軍隊は、その後、神からの火で滅ぼされることになります。
イスラエルの山々に集められたゴグの軍隊は、剣、疫病、豪雨、雹、火、硫黄で滅び、マゴグの地にも火が降り注ぎます。黙示録では、エルサレムは死病やさまざまな災害に襲われ、火で焼き尽くされます。
3.鳥や獣の餌食となる
① エゼキエル39章:ゴグの軍隊の最後
神である主にイスラエルの山々で切り殺されたゴグの連合軍は、あらゆる種類の鳥や獣の餌食になります。
エゼキエル39:4
あなたと、あなたのすべての部隊、あなたの率いる国々の民は、イスラエルの山々に倒れ、わたしはあなたをあらゆる種類の猛禽や野獣のえじきとする。エゼキエル39:17~20
神である主はこう仰せられる。人の子よ。あらゆる種類の鳥と、あらゆる野の獣に言え。集まって来い。わたしがおまえたちのために切り殺した者、イスラエルの山々の上にある多くの切り殺された者に、四方から集まって来い。おまえたちはその肉を食べ、その血を飲め。勇士たちの肉を食べ、国の君主たちの血を飲め。・・・わたしがおまえたちのために切り殺したものの脂肪を飽きるほど食べ、その血を酔うほど飲むがよい。おまえたちはわたしの食卓で、馬や、騎手や、勇士や、すべての戦士に食べ飽きる。
② 黙示録:獣の軍隊の最後
黙示録19章では、白い馬に乗った方と戦って殺された獣の軍隊が、鳥の餌食となります。
黙示録19:11~21
また、私は開かれた天を見た。見よ。白い馬がいる。それに乗った方は、「忠実また真実」と呼ばれる方であり、義をもってさばきをし、戦いをされる。・・・この方の口からは諸国の民を打つために、鋭い剣が出ていた。この方は、鉄の杖をもって彼らを牧される。この方はまた、万物の支配者である神の激しい怒りの酒ぶねを踏まれる。その着物にも、ももにも、「王の王、主の主」という名が書かれていた。また私は、太陽の中にひとりの御使いが立っているのを見た。彼は大声で叫び、中天を飛ぶすべての鳥に言った。「さあ、神の大宴会に集まり、王の肉、千人隊長の肉、勇者の肉、馬とそれに乗る者の肉、すべての自由人と奴隷、小さい者と大きい者の肉を食べよ。」
また私は、獣と地上の王たちとその軍勢が集まり、馬に乗った方とその軍勢と戦いを交えるのを見た。すると、獣は捕らえられた。また、・・・にせ預言者も、彼といっしょに捕らえられた。そして、このふたりは、硫黄の燃えている火の池に、生きたままで投げ込まれた。残りの者たちも、馬に乗った方の口から出る剣によって殺され、すべての鳥が、彼らの肉を飽きるほどに食べた。
白い馬に乗った方は「神のことば」「忠実また真実」「王の王、主の主」と呼ばれるイエス様です。獣と地上の王たちとその軍勢は、馬に乗ったイエス様とその軍勢と戦います。獣と偽預言者は火の池に投げ込まれます。王たちと軍勢は主の御口から出る剣によって殺され、すべての鳥の餌食になります。
ゴグの軍勢はイスラエルの山々で神である主に切り殺され、鳥や獣の餌食となります。黙示録では、獣に率いられた王たちの軍勢がイエス様の口から出る剣で殺され、鳥の餌食となります。
4.埋められた谷
① 「ハモン・ゴグの谷」
エゼキエル39:11~13、16
その日、わたしは、イスラエルのうちに、ゴグのために墓場となる場所を設ける。それは、海の東にある去り行く者たちのための谷である。そこは通行人の道をふさぐ。そこにゴグと、その大軍すべてが埋められ、そこはハモン・ゴグの谷と呼ばれる。7か月間、イスラエルの家は、その地をきよめるために彼らを埋め続ける。・・・わたしの栄光が現されるとき、そのことは彼らにとって名誉となる。・・・ そこの町の名はハモナとも言われる。こうして彼らは国をきよめる。
ハモナは「群衆、群れ」という意味です。地をおおう雲のように広がったゴグの大軍勢は、イスラエルの山々で殺され、「去り行く者たちのための谷」、別名「ハモン・ゴグの谷」に、7カ月間かけて埋められます。
海は普通、地中海を指すので、地中海の東側にゴグの大軍の広大な墓場ができると考えられます。
② 険しい地が平らにされる
黙示録では、主が雲に乗って来られると、地のぶどうの房が駆り集められ、神の憤りの大きな踏み場で踏まれます。その流れ出た血は馬のくつわに届くほどになり、1600スタディオン(約300km)に広がります(黙示録14:14~20)。イスラエルの領土は南北の長さが470kmですから、領土の三分の二にも広がった血の海を埋めるためには、山を削って大量の土で覆う必要があるでしょう。
その結果、次の預言が成就することになります。
イザヤ40:3~5
荒野で叫ぶ者の声がする。「主の道を用意せよ。荒れ地で私たちの神のために、大路をまっすぐにせよ。すべての谷は引き上げられ、すべての山や丘は低くなる。曲がったところはまっすぐになり、険しい地は平らになる。このようにして主の栄光が現されると、すべての肉なる者がともにこれを見る。まことに主の御口が語られる。」
エゼキエル39章では、ゴグの軍勢が埋められ、主の栄光が現されます。イザヤ40章では、谷が引き上げられ、山や丘が低くされ、主の栄光が現されます。それは、主が怒りのぶどうを踏まれ、全ての悪を滅ぼされた結果であると思われます。
5.ゴグ・マゴグの戦いが終末戦争である理由
ゴグ・マゴグの戦いと言われるエぜキエル38章の戦いと、ハルマゲドンと呼ばれる世の終わりの戦いを比べると、共通点がありました。
・イスラエルと周辺諸国に大地震が起こる。
・剣、疫病、雹の災害が起こり、敵も土地も火で焼き尽くされる。
・主の敵は神の剣で殺され、鳥たちの餌食になる。
・敵の大軍の死体を埋める。
① 最終戦争の目的は主を知ること
では、ゴグ・マゴグの戦いが艱難時代の最後に起こる戦いであることを、神様の視点から考えてみましょう。それは、この戦争の結果、イスラエルの民と諸国の民がイエス様を知るようになるということです。
エゼキエル39:1~2、7
・・・メシェクとトバルの大首長であるゴグよ、わたしはおまえを敵とする。わたしはおまえを引き回し、おまえを駆りたて、北の果てから上らせ、イスラエルの山々に連れて来る。・・・わたしは、わたしの聖なる名をわたしの民イスラエルの中に知らせ、二度とわたしの聖なる名を汚させない。諸国の民は、わたしが主であり、イスラエルの聖なる者であることを知ろう。
イスラエル民族の多くは、十字架で贖いを成し遂げられたイエス・キリストをまだ受け入れていません。ローマ・カトリックによる強制改宗、キリスト教国での迫害、十字軍やホロコーストを体験して、ユダヤ民族は消えがたい傷を持ち、「イエス」という名前に憎しみを持つ人も多くいます。そして長い間、「イエスはイスラエル民族を滅ぼす悪魔の使いであり、新約聖書はその計画書である」と考えてきました。イスラエルでは、キリスト教の宣教は違法です。
イエス様が天から現れ、敵を滅ぼして彼らを救い出し、ご自分が「ダビデの子」であると証明される時、イスラエル民族は自分たちの本当の救い主を知り、二度と主の聖なる名を汚さなくなります。
そして諸国の民も、イエス様がイスラエルを救う聖なる方、真の神、唯一の主であることを知ります。
エゼキエル39:21~22
わたしが国々の間にわたしの栄光を現すとき、国々の民はみな、わたしが行ったわたしのさばきと、わたしが彼らの上に置いたわたしの手を見る。その日以降、イスラエルの家は、わたしが彼らの神、主であることを知る。
ゴグ・マゴグの戦いの結果、諸国の民が主(イスラエルの聖なる方)を知り、イスラエルの家も、イエス様が主であることを知ります。その事が起こるのは主が再臨される時です。ですから、ゴグ・マゴグの戦いは、終わりの日、主の御怒りの日の戦いなのです。
② イスラエルとエルサレムを中心に、神の視点から理解する
「ゴグ・マゴグの戦い(エゼキエル戦争)」と「ハルマゲドンの戦い」という名称は、聖書の中には出て来ません。
マゴグのゴグは神に反逆する軍隊のリーダー「マゴグの地の大首長」を表しています。ハルマゲドンは反キリスト軍の集結する「メギドの丘」を指しています。
これら2つの戦争は終わりの日の戦いについて預言しています。
そしてエゼキエル以外の旧約の預言者たちも、主の日の戦いについて預言しました。預言者たちは同じ終末戦争について、異なる視点からそれぞれの表現で預言し、使徒ヨハネは旧約預言の前提の上に、黙示録で最後の戦争についての幻を書き記しました。戦いに関する多くの預言は、主の再臨時の戦い、「神の大いなる日の戦い」について教えているのです。
・神の人類救済計画はエルサレムを中心に進展していきます。
・悪魔は神の計画を破壊するために、常にエルサレムとイスラエル民族を攻撃し続けています。
・世の終わりの最終戦争は、エルサレムをめぐる戦いの総決算です。
・その戦いの目的は、イスラエルの民族的救いとアブラハムへの土地の約束を実現させ、イスラエルの神の全能の力と神の御計画の確かさを実証し、聖書の神こそ真の神であると全世界に示すことです。
全ての敵が滅ぼされて悪魔が閉じ込められ、主が再臨されて神の国が到来する時、人類の救いが完成し、エルサレムに真の平和が訪れます。私たち異邦人クリスチャンは、イスラエルへの神の約束が実現する時、ともに神の国の祝福に与ることができるのです。
コメント
素晴らしいメッセージの数々を心より感謝します。60代の普通のクリスチャン(信徒)です。
以前から艱難時代前の携挙(空中再臨)に疑問を持ち、それを信じている牧師と対立して大変いやな思いをしたことが多々ありました。
ご質問したいのですが、ゴク・マゴクの戦いでの死者を7カ月かけて葬るのであれば、ゴク・マゴク(ハルマゲドン)即イエス様の再臨ではないと理解していいのでしょうか?
ダニエルのいう荒らす憎む者がエルサレムの第三神殿に坐するとして、彼がいわゆる反キリスト(獣)エルサレムが大淫婦バビロンならば、それをゴク・マゴクの軍勢が攻め立てるという理解でよろしいのでしょうか?
お教えいただけると感謝です。
志甫様
当ブログを精読くださり大変ありがとうございます。
個人的事情でしばらくブログ更新ができず、お返事が遅くなり申し訳ありません。
ご質問の件ですが、
大淫婦バビロンとなってしまったエルサレムと、自分を神とする不法の者を裁くために、神様がゴグ・マゴグを用いられると思います。一方、ゴグと彼に従う軍隊も神に反抗する者であり、天から降って来られたイエス様に滅ぼされてしまいます。ちょうど旧約時代に、不信仰で罪を重ねていたイスラエルを懲らしめるために主が異邦人の国を用いられ、その異邦人の国もやがて主に滅ぼされてしまったように、主はゴグを通して神に逆らう者を振り分け、裁かれるのだと推測します。
この戦いの後、イスラエルの家はイエス様が自分たちの神、主であることを知ります。主はイスラエルの全家をあわれみ、回復させ、国々から民を帰らせ、主の霊を注ぐと約束されているので、ゴグ・マゴグの戦いは、大艱難時代の前ではなく、イエス様の王国が地上に実現する直前の出来事であると思います。
地上に残ったイスラエルの民は、実際に姿を現わされたイエス様を見て信じ、その後、王の指示に従って地を清め、戦後処理をするのかもしれません。イスラエルの秋の祭では、大贖罪日で罪の赦しがなされた後、5日後に始まる仮庵の祭に向けて準備します。大贖罪日が主の日を予表し、仮庵の祭が再臨後のメシア王国(神の国)を予表しているとするなら、主が現れて敵を滅ぼされてから、神の国の祝宴が始まるまでに、数カ月あるのかもしれません。このあたりは詳しくはわかりません。
終末についてはいろいろな説があるので混乱します。私もまだわからないことが多々ありますが、主が理解する力を与えてくださるように祈りつつ、ひたすら御言葉から読み解いています。